COLUMN
Tokujin Yoshioka about “Glass Watch”

時代に左右されないデザインを
無機物のガラスの塊で表現する

2018.12.14

無機質なガラスの塊をそのまま時計に落とし込んだ「Glass Watch」。実は吉岡徳仁がイッセイミヤケのプロジェクトに参画した2005年当時から、デザインコンセプトとして存在していたという。10年間の時を経て製品化したその経緯に迫る。

昨今の高級時計業界では、素材がブームになっている。現在の機械式時計のメカニズムは400年以上前に完成しており、小さな改良こそあるものの、進化の袋小路にはまり込んだ状況にある。そこで新しいスタイルを見つけるために素材に注目したのだ。なかでも注目されているのがガラス。反射する光の効果や浮遊感で、時計デザインに新しい風を吹き込んでいる。

しかしそのアイデアを、10数年前に描いていたのが吉岡徳仁である。
彼がISSEY MIYAKE WATCH のプロジェクトに参画した際に、一つのキーワードとしたのが"素材感"。ガラスや金属など、マテリアルそのものの素材感を時計に結びつけることを目指した。"ガラスの時計"は最初に出したアイデアだったが、その当時は技術的な問題で見送りになったという経緯があったのだ。

吉岡とガラスの関係は密接だ。2002年にガラスのベンチ「Water Block」を発表。この作品はパリのオルセー美術館にも常設展示されるほど好評を得た。翌年には「Chair that disappears in the rain - 雨に消える椅子」を発表。こちらは六本木ヒルズのパブリックアートに選ばれている。彼はガラス素材で、光そのものを表現するアーティストなのである。

残念ながら2005年当時は、素材加工や掘削や研磨技術の関係で製品化が困難だった。しかしテクノロジーが新しい時代を切り開いた。Glass Watchはガラスに厚みを持たせることで、素材の持つ質感を強調させるところに個性がある。スクエア形の案もあったが、鋭角部分のガラスは割れやすい。その打開策として考えたのが、ラウンド形で厚みを持たせるというものだった。これが突破口になった。

風防ガラスの厚みは約7㎜。ただし斜めや真正面から時計を見ても、時分針は一切ゆがまないように加工している。ここからもデザインだけでなく、時計としての必要な役目を果たそうという真摯な姿勢が見えてくる。

「アイデアから10年以上たちましたが、プロジェクトが実現できると知ったときは感慨深いものがありました。この時計に関しては、デザイン云々というよりも、まず技術力が素晴らしいと思います。色々なリスクを考えて、設計者に検証していただき実現し、世の中にデビューできたことを大変うれしく思っています」

Glass Watchは、インスピレーションと技術の融合から生まれた作品だ。多くの関係者の努力や技術革新が、吉岡らしい"光のオブジェ"を完成に導いたのである。

「結果として最初の作品となった「TO」は14年間にわたる、息の長いプロジェクトになりました。しかし10年の歳月を経て生まれたこの「Glass Watch」も、時代に流されないデザインウオッチの"オーパーツのような存在"になったと感じています」

ガラスという素材が作り出す光を楽しみ、その繊細な造形美を愛でるアクセサリーウォッチである。

DESIGNER

吉岡 徳仁

吉岡 徳仁 | Tokujin-Yoshioka

2000年、吉岡徳仁デザイン事務所を設立。デザイン、建築、現代美術の領域において活動し、詩的かつ実験的な作品は、国際的に高く評価されている。国際的なアワードを多数受賞し、作品はニューヨーク近代美術館(アメリカ)やポンピドゥー・センター(フランス)、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(イギリス)など、世界の主要美術館に永久所蔵されている。アメリカNewsweek誌による「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれている。

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