COLUMN
Ichiro Iwasaki about “C”

時を構成する要素はなんだか美しくて、まだ戯れていたいという気持ち、まだ時計の世界に浸っていたいという気持ちにさせてくれます。

2018.07.06

ISSEY MIYAKE WATCHプロジェクトの新たな挑戦として、機器デザインのプロフェッショナルである岩崎一郎氏を起用し、ウオッチ(クロノグラフ)デザインそのものに、真正面から向き合ったシリーズ「C シィ」。
そのコンセプトとデザインに対する思いとは。

「C」を作り上げたときの想い、アプローチにおいて苦労した点は?

私が関わらせていただいているカメラ、家具、アナログ時計などのデザインは深い歴史と文化的背景とともにあるものなので、繊細で奥深く、ちょっと気難しくて気高いという共通点があります。デザインしていても、実際に使ってみても感じるのですが、アナログ時計にしかない時計らしさには、やっぱり最先端という物差しでは計れない魅力があると思うんです。苦労した点ではないんですが、時計であれば腕にしてみて初めて完成するものだと感じましたね。デザインのスケッチはいくらでもできますが、それを実際につけてみて腕に馴染むかどうか判断する必要がありますし、そこでデザインの調整をする必要もでてくる。そういったところで物がどんどん成熟し深まっていくのが、いずれ使い手の愛着に繋がっていくのかなと思いました。

「C」のモデルはなぜクロノグラフになったのでしょうか?

針であったり、ダイヤルであったり、イメージする時計の主要素を線と数字として捉えて、その構成から導かれる美しさを素直に落とし込んでいったときに、その表現に最も相応しいのがクロノグラフでした。クロノグラフは視認性でバランスをとると、メインダイヤルのインデックスは強く、ストップウオッチ用のサブダイヤルはそれより弱く。という明確な強弱が時計らしさの原則なのかもしれませんが、「C」のデザインではメインダイヤルとサブダイヤルの線と数字の要素に強弱をつけずに馴染ませつつ視認性も確保した“時を示す図”のようなイメージを持ってデザインしました。「C」はそうした微差のバランスにデザインを集約させたことで、楽譜や数式のように線や数字が主役となり、また線や数字本来の意味を失うことなく静かに、そしてリズミカルに馴染んでいきました。

「C」の魅力とは?

点や線、文字、数字という時を構成する要素はなんだか美しくて、まだ戯れていたいという気持ち、まだ時計の世界に浸っていたいという気持ちにさせてくれます。腕時計はプロダクトの中でも特に多様な価値観で見られる側面があると思いますが、そういう純粋な線と数字という、古びることのない時計らしい機能美そのものの魅力を、そのまま感じて頂けるようにデザインしました。

DESIGNER

岩崎 一郎

岩崎 一郎 | Ichiro Iwasaki

1965 年東京生まれ。ソニー(株)デザインセンター勤務の後、渡伊。
ミラノのデザイン事務所を経て帰国後、1995年にイワサキデザインスタジオ設立。国内外の企業と協働し、テーブルウェアや照明器具、家具などのインテリア用品から、デジタルカメラ、携帯電話などの精密電子機器まで、プロダクト全般のデザインを手がけている。グッドデザイン賞・金賞、iF デザイン賞・金賞、Red Dot デザイン賞 Best of the Best、ドイツデザイン賞・シルバーなど、主要国際デザイン賞を多数受賞。
東京藝術大学及び、多摩美術大学非常勤講師。